フレッチャーとは?

イギリス、ノッティンガムにあるロビン・フッドの像

仕事はわたしたちの生活に大きく影響します。わたしたちは仕事に何時間も費やし、勤務時間を中心にスケジュールを立て、仕事と重ならないようにそれ以外の活動の予定を組みます。この経験は現代に限ったことではありません。わたしたちの先祖は、今日のわたしたちと同じように、仕事を中心に生活を計画しました。先祖の職業についてさらに知ることで、彼らの生活がどのようなものであったかについて、より深い洞察を得ることができます。過去の興味深い仕事の一つに、フレッチャーという職業があります。

フレッチャーの歴史

フレッチャーは、アーチェリー、狩猟、そして歴史的には戦争に用いる矢を専門に作る熟練職人です。

矢の製作者は何千年も前から存在していて、クロスボウや長弓が使われた中世ヨーロッパで注目を集めました。

1217年のリンカーンの戦いが挿絵に描かれた中世の写本

当時の軍隊は、特に百年戦争(1337-1453年)の間、何十万本もの矢を使用しました。フレッチャー、ボイヤー(弓を作る人)、ストリンガー(弓を張る人)は、戦争中に高い需要がありました。こうした職人は王、貴族、軍隊に雇われ、非常に重要な存在だったため特別な待遇を受け税金を免除されていました。

1370年ごろ、フレッチャーの間に組合(Worshipful Company of Fletchers)が結成されました。それ以前は、フレッチャーは弓職人と同じ組合に属していて、独自の組合を作ることで高品質の矢を確実に生産することができました。現在もシティ・オブ・ロンドンの同業組合110のうち最古の団体の一つとして存続し、アーチェリーの伝統を守る公益団体となっています。フレッチャーは今でもアーチェリー、狩猟、歴史の再現のために矢を作っています。

矢のパーツ

一般的な矢は、シャフト(軸)、矢じり、フレッチ(羽根)、ノック(矢筈〔やはず〕)の4つで構成されます。どのパーツもそれぞれ、矢を飛ばす役割を果たします。

シャフト

中世の矢じり
Hampshire Cultural Trust, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

矢のシャフトは、ほかの全パーツが取り付けられる矢の本体です。古くは木で作られました。現代では、アルミニウム、グラスファイバーなどで作ることもできます。

矢じり

矢じりは矢の先端部分です。使用目的に応じて鋭利なものもあれば、そうでないものもあります。

歴史的に、矢じりには、ウサギや鳥などの小さな動物、鹿や熊などの大きな動物を狩るために、様々なサイズのものがありました。戦争や防衛のための矢じりは、まったく異なる形をしていました。鋭利でない矢じりは、的当ての練習に使用できました。

フレッチ

フレッチとは、矢じりと反対側の端に取り付けられた羽根を指します。単なる飾りではありません。実際には、矢を安定させ、飛んでいる間のぐらつきを防ぎます。

木製の矢のフレッチとノック

フレッチは、対称的な角度でシャフトに取り付けた通常3枚または4枚の羽根で構成されます。羽根に角度をつけることで、矢が飛ぶときに回転するのを助けます。

ノック

ノックは、シャフトの羽根側の先端に入れた小さな切り込みです。ノックがあることで、射手は矢を弓の弦に固定できます。射手が弓の弦を引いてから放すと、ノックが受ける弦の力で矢が前進します。

歴史的には、シャフトに直接切り込みを入れていました。現代では、別の部品として取り付けることがあります。別にすることにより、壊れた場合の交換が容易になります。また、木製のシャフトに切り込みを入れるよりも、アルミニウムやグラスファイバー製のシャフトに直接切り込みを入れるのははるかに困難だという事情もあります。

矢はどのように作られるか

矢のパーツを4つすべて作るフレッチャーもいれば、特定のパーツに特化したフレッチャーもいました。4つのパーツをすべて組み立てて一つにすると、フレッチャーの矢作りは完成です。

通常は白樺材、トネリコ材、ヘーゼル材といった、矢に使う木材を選んだら、フレッチャーは木材の表面を剥いで矢に適した好みのサイズに成形しました。矢のサイズは、その矢が何に使われるかによって決まりました。シャフトが重いほど、標的に当たったときの威力と貫通力が高くなり、軽いほど速く飛ばすことができます。矢の飛び方は、矢とともに使われる弓のサイズによっても異なります。

矢じりを形作るフレッチャー

フレッチャーは石や金属で矢じりを作り、シャフトの先端に取り付けます。

矢じりを固定するために様々な技術を用いました。一部の矢じりには、シャフトの端が収まるように空洞がありました。細い金属片、結束ひも、または松やに、蜜ろう、動物性脂肪などで作られた接着剤または樹脂で固定していました。

矢じりを取り付けると、矢を安定させて的中精度を高めるために、白鳥、ガチョウ、七面鳥など適切なサイズと形状の鳥の羽根を選びます。羽根を適切なサイズに整えた後、接着剤または帯かけでシャフトに取り付けます。最後に、小さな刃を使ってシャフトの羽根側の端にノックを切り込みました。こうして矢は完成し、いつでも使えるようになります。

フレッチャーの職業から取った名字

姓はアイデンティティーの一部であり、しばしば先祖から受け継いだものを反映しますが、昔からそうだったわけではありません。コミュニティーが拡大するにつれて、姓は個人を区別する方法となり、時を経て、子孫が承継するものになりました。

フレッチャーのように、個人の職業に由来する姓もあります。あなたの姓がフレッチャーであれば、姓の背景を知ることで、先祖の生活について洞察が得られるかもしれません。

フレッチャーという名前は、古いフランス語で「矢を作る人」を意味するflecherに由来しています。フレッチャーは職業上の名前ですが、ノルマンディー出身のある家族の祖先に由来しているとも考えられます。西暦1066年のノルマン人の征服後にイングランドに土地を与えられた貴族ジャン・ド・ラ・フレッシュです(訳注-フレッシュ(Fléche)は「弓」の意)。

この姓はおもにイギリス諸島と北アメリカで見られますが、フレッチャーの職業に由来する姓はほかの言語でも見つけることができます:

言語

意味

中国語Zhang引っ張る、伸ばす
(弓の木を引っ張る弓職人を表しているかもしれません)
英語Arrasmith
Benbow
Bowman
Stringer
矢を作る人
弓を曲げる
射手
弓の弦の製作者
ドイツ語Pfeilmacherフレッチャー
ハンガリー語Nyilas射手、弓兵
イタリア語Fileccia
Saitta
矢、射手、フレッチャー
ポーランド語Sajdak矢筒を作る人、射手、フレッチャー
スコットランド・ゲール語Mac an Fleisdeir
(英語ではLister)
矢作り職人の息子

あなたの姓は職業に由来していますか。ファミリーサーチの姓による検索で調べてみましょう。

先祖の職業を見つけ出す

先祖の職業や生い立ちについて知ることは、興味深いだけでなく、先祖の生活を理解するのに役立ち、家系図に親族を追加するきっかけにもなるかもしれません。

国勢調査記録を使って、あなたの家族の職業について知ることができます。国勢調査で収集する情報には多くの国で職業が含まれていました。出生記録や死亡記録、徴兵記録、乗客名簿、職業名簿、死亡記事などにも、人々がどのように生計を立てていたかに関する情報が含まれていることがあります。

先祖とその生活についてさらに多くの情報を見つけたら、ぜひファミリーツリーに追加してください。


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