何世紀にもわたって,フランス政府とフランス文化は幾度も変遷をたどってきました。このような変化は,しばしば記録の保存にも影響を与えました。良いニュースとしては,フランスの歴史的変化が時として貴重なフランスの系図記録を生み出すことになったということです。以下は,フランスの歴史が先祖に関するフランスでの記録にどのような影響を与えたかの例です。
カトリック教会と教区記録
何百年もの間,ローマ・カトリック教会はフランスの歴史と記録の保存において影響力のある役割を果たしてきました。現代フランスの創始者とされるクローヴィス1世は,500年頃にカトリックに改宗しました。教会とフランス王政は相互に支え合い,フランスのローマ・カトリック教会は国教となりました。

1539年,フランソワ1世は,ヴィレール=コトレの勅令に署名し,司祭に洗礼簿の保管を義務付けました。それから40年後,別の法律で結婚と埋葬の記録も保管することが義務付けられました。ルイ14世はさらに,1667年から教区の生涯記録の写しを作成することを義務付け,以後少なくとも1部は現存する可能性を高めました。
これらの記録によって,フランス人の先祖を1600年代,あるいは1500年代までさかのぼることができることもあります。一般的に,家系図作成者が家系図を再構築するのに役立つ詳細が含まれています。例えば,洗礼簿には通常,幼児の名前と洗礼日(通常は生後2日以内),両親の名前が記載されていました。婚姻登録簿はまた,新郎新婦の両親や,おそらく亡くなった配偶者(後の結婚の場合)を特定し,互いに血縁関係にある新郎新婦の家族関係を説明していました。埋葬記録には,故人の生存配偶者や両親の名前が記されていました。
フランス革命と住民登録
1789年に始まったフランス革命は,王政とカトリック教会の政治権力を根底から覆しました。1792年,新しい法律により,公的な生涯記録を保管する責任が教区の司祭から新しい住民事務所に移されました。地元の住民登録担当者は,地元の教会から登録簿を集め,新たに出生,結婚,死亡の記録をとり始めました。教区の司祭は教会で使用するための登録簿を管理し続けたので,この時点から,フランス人の先祖の住民登録と教区の記録の両方を見つけることができるかもしれません。

初期のフランスの住民登録記録はそれほど詳細ではありませんでしたが,最終的にはかなりの数の系図情報が含まれていました。出生記録は,子供の名前,性別,生年月日,出生地,両親の名前(母親の旧姓を含む)などを明らかにしています。結婚記録は,新郎新婦を特定し,出生情報,両親の詳細,4人の証人の身元,そして時にはそれ以上の情報を提供しています。死亡記録には通常,少なくとも故人の名前,死亡日,死亡場所,死亡時の年齢,出生地,両親の名前が記載されています。
移行期の国勢調査と国家
フランスは全国的な国勢調査を実施するのが遅かったのです。国民は,列挙されることで課税が強化され,兵役が強制されることを恐れました。1700年代後半には,幾つかの地方で国勢調査が行われましたが,残っているのはほとんどが統計データです。ナポレオンは1801年に最初の国勢調査を命じました。その後,幾つかの国勢調査が実施されたものの,物流上の問題や政治的混乱により,1836年まで全国的な国勢調査は成功しませんでした。

1836年以降,(普仏戦争のため1年遅れた)1871年と第一次および第二次世界大戦時を除き,フランスで国勢調査は,5年ごとに実施されました。国勢調査は地域レベル(département)で行われるため,内容はさまざまです。しかし,一般的には,各人の姓名(女性の場合は旧姓の場合もある),年齢または出生年,職業,世帯主との続柄,配偶者の有無がわかります。国籍,出生地,住所,さらに詳細な雇用情報が表示されることもあります。
パリ・コミューンと家族登録
1871年の春,パリは内乱に見舞われました。ナポレオン3世率いるフランス政府は,普仏戦争で敗れたばかりでした。戦後政府はパリでは人気がありませんでした。市議選の結果,対立するパリ・コミューンが結成されました。5月21日,激しい衝突が起こり,住民登録記録が保管されていたパリの市庁舎を含む公共施設が焼き払われました。市内の住民登録簿はほとんどすべて破壊されました。
この壊滅的な損失により,フランス政府は家族の住民登録記録を生涯記録に加えることにしました(パリでは1877年,フランス全土では1884年)。夫婦は結婚したときに家族登録小冊子を受け取り,子供が生まれる(あるいは子供が亡くなる)たびにこの小冊子を住民登録事務所に持って行き,更新してもらいました。この小冊子は,個人の出生記録や死亡記録のバックアップとして使用されました。この小冊子は,フランスの家庭で代々受け継がれることもありました。

パリの身分証明書(1792~1795年),年金記録,徴兵記録,選挙区の名簿など,歴史的な出来事や政治的な政策によりほかにも多くのフランスの系図記録が作成されました。
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